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相続税の計算で最も重要なのが相続財産の評価です。現金や預貯金はそのままの金額ですが、不動産や株式は特別な評価方法で計算します。この記事では主な財産の種類別に評価方法をわかりやすく解説します。
- 不動産の評価は路線価方式または倍率方式で計算
- 自宅の土地は小規模宅地の特例で最大80%減額できる
- 上場株式は4つの価額のうち最も低い価額を使用
- 生命保険金・退職金には非課税枠(500万円×相続人数)がある
財産の種類別:評価方法一覧
| 財産の種類 | 評価方法 | 評価額の目安 |
|---|---|---|
| 現金・預貯金 | 残高そのまま | 口座残高+利息 |
| 土地(市街地) | 路線価方式 | 実勢価格の70〜80%程度 |
| 土地(農村部) | 倍率方式 | 固定資産税評価額×倍率 |
| 家屋・建物 | 固定資産税評価額 | 建築価格の50〜70%程度 |
| 上場株式 | 4価額の最低額 | 時価の前後 |
| 非上場株式 | 類似業種比準価額等 | 専門家による評価が必要 |
| 生命保険金 | 受取額−非課税枠 | 500万円×相続人数が非課税 |
| 退職手当金 | 受取額−非課税枠 | 500万円×相続人数が非課税 |
| 借入金・負債 | 残債そのまま(控除) | 相続財産から差し引き |
土地の評価:路線価方式の計算方法
市街地の土地の評価には路線価方式が使われます。路線価とは、道路(路線)に面した土地1平方メートルあたりの価格で、国税庁が毎年7月に公表します。
計算式:路線価 × 面積(㎡) × 各種補正率
例:路線価20万円/㎡、土地面積100㎡の場合
- 基本評価額:20万円 × 100㎡ = 2,000万円
- 路線価は公示地価の約80%が目安なので、実勢価格は約2,500万円程度
補正率は土地の形(奥行き、間口、不整形など)によって変わります。複雑な形の土地は評価額が低くなることがあります。路線価は国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。
小規模宅地の特例(最大80%減額)
被相続人が住んでいた自宅の土地(特定居住用宅地等)は、330㎡まで評価額を80%減額できる特例があります。
| 宅地の種類 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(自宅) | 330㎡ | 80%減 |
| 特定事業用宅地等(事業用) | 400㎡ | 80%減 |
| 貸付事業用宅地等(賃貸) | 200㎡ | 50%減 |
先ほどの2,000万円の土地に小規模宅地の特例を適用すると:
- 減額:2,000万円 × 80% = 1,600万円減
- 評価後:400万円(元の20%)
上場株式の評価方法
上場株式は以下の4つの価額のうち最も低い価額で評価します(財産評価基本通達169条)。
- 相続が発生した日(課税時期)の終値
- 課税時期の属する月の終値の月平均額
- 課税時期の属する月の前月の終値の月平均額
- 課税時期の属する月の前々月の終値の月平均額
例:Aさんが7月15日に亡くなり、保有株式(100株)の各月平均価格が:
- 7月15日の終値:2,800円
- 7月の月平均終値:2,750円
- 6月の月平均終値:2,600円 ← 最低
- 5月の月平均終値:2,700円
→ 評価額:2,600円 × 100株 = 260,000円
生命保険金の評価と非課税枠
被相続人が契約者・被保険者で、相続人が受取人の生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、500万円×法定相続人の数が非課税となります。
例:相続人が配偶者・子2人の3人で、生命保険金2,500万円を受け取った場合:
- 非課税枠:500万円 × 3人 = 1,500万円
- 課税対象:2,500万円 − 1,500万円 = 1,000万円
不動産・非上場株式の評価は専門知識が必要です。まずはかんたん計算ツールで概算を確認し、詳細は税理士にご相談ください。
相続財産の評価方法一覧
相続税の計算で使う「相続税評価額」は、財産の種類によって評価方法が異なります。時価より低く評価できる財産を知ることが節税の第一歩です。
| 財産の種類 | 評価方法 | 時価との比較 |
|---|---|---|
| 現金・預貯金 | 残高(利子を含む) | 100% |
| 上場株式 | 死亡日・前後3ヶ月の最終価格の最小値 | 時価に近い |
| 投資信託 | 死亡日の基準価額×口数 | 時価に近い |
| 土地(市街地) | 路線価方式 | 約80% |
| 土地(農村等) | 倍率方式 | 約60〜80% |
| 建物 | 固定資産税評価額 | 約50〜70% |
| 貸家・貸家建付地 | 自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合) | さらに低下 |
| 生命保険(解約返戻金) | 解約返戻金相当額 | − |
貸家建付地の評価計算例
【例】路線価による評価額5,000万円・借地権割合70%・借家権割合30%の場合
| 計算 | 金額 |
|---|---|
| 自用地評価額 | 5,000万円 |
| 減額:5,000万円×70%×30% | ▲1,050万円 |
| 貸家建付地評価額 | 3,950万円 |
賃貸物件を建てることで土地の評価額が21%(1,050万円)下がります
非上場株式の評価(中小企業オーナー向け)
同族会社の非上場株式は「類似業種比準方式」「純資産価額方式」またはその折衷で評価します。評価が高くなりがちで、相続税が払えないことも。事業承継税制(株式の相続税・贈与税の納税猶予)の活用を検討しましょう。
「相続税評価額」と「実際の売却額」の差
土地の相続税評価額は時価の80%が目安ですが、実際の売却額がそれより高ければ問題なく、低ければ相続税を払っても手元に残る現金が少なくなります。遺産に含まれる不動産については、相続前後の売却も含めた資金計画を立てることが重要です。
「相続財産の評価は低い方が得」は誤解
相続税を下げるために評価額を低く見積もりたい気持ちはわかりますが、実際の時価より大幅に低い評価は税務調査で否認されることがあります。特に:
- 農地・山林の評価を誤る(地目のミス)
- 非上場株の評価を低く設定する(利益・資産が大きい会社)
- 借地権・底地の評価を誤る
正確な評価と、適法な特例(小規模宅地等の特例など)を組み合わせることが正しいアプローチです。
相続財産の評価と節税の関係
相続税は評価額が下がるほど節税になります。合法的に評価額を下げる主な方法:
| 方法 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| 賃貸物件を建てる | 土地評価が20%前後低下 | 空室では評価が下がらない場合も |
| 小規模宅地等の特例 | 最大80%減額 | 要件・申告が必要 |
| 路線価の「補正」適用 | 不整形地等は評価が下がる | 計算が複雑で税理士が必要 |
評価額の計算を間違えた場合の対処
相続税の申告後に評価額の誤りを発見した場合:
- 税額が多かった(払いすぎた):申告期限から5年以内に「更正の請求」で還付可能
- 税額が少なかった(申告漏れ):自発的に「修正申告」→ 加算税が軽減される場合あり
- 税務調査で指摘された:修正申告 or 更正処分 → 過少申告加算税15%または重加算税35〜40%
不動産の評価は専門的な判断が必要なため、税理士(特に相続専門)への依頼が評価ミスのリスクを最小化します。
参照・引用資料
- 国税庁 タックスアンサー
- 国税庁 統計年報
- 財務省 税制改正
- 相続税法(昭和25年法律第73号)・租税特別措置法