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「相続税って、お金持ちだけが払うもの」——私も最初はそう思っていました。祖父が亡くなったとき、手続きを進める中で預貯金だけでもかなりの金額になっていることに気づき、慌てて調べ始めた経験があります。そのときの「もっと早く知っておけばよかった」という気持ちが、このサイトを作るきっかけでもあります。
結論から言うと、相続税が課税されるのは日本全体の約10人に1人です。国税庁の統計(令和4年分)では、亡くなった約156.9万人のうち相続税の申告が必要だったのは約15.1万人(課税割合9.6%)。意外と少ないですよね。
ただし「自分が該当するのかどうか」は、正確に計算しないとわかりません。この記事では相続税がかかるかどうかの判断基準と、家族構成別の計算例を解説します。
- 相続税がかかるかどうかは「遺産総額 > 基礎控除額」で判断
- 基礎控除は3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
- 課税される人は全体の約10人に1人(国税庁・令和4年分統計)
- 配偶者控除を使えば多くの場合で相続税がゼロになるが申告書の提出は必要
相続税の基礎控除の計算式
相続税がかかるかどうかは、まず基礎控除と遺産総額を比較します。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
遺産総額が基礎控除以下であれば、相続税はゼロで申告も不要です(一部特例を使う場合を除く)。
「法定相続人の数」の数え方と注意点
配偶者は常に相続人になります(内縁関係は除く)。子・孫・親・兄弟姉妹は優先順位があり、より上位の人がいる場合は下位の人は相続人になりません。
養子の注意点:基礎控除を増やすために養子を迎えるケースがありますが、相続税計算では法定相続人に含められる養子の数に上限があります(実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで)。
家族構成別:基礎控除額の一覧
| 家族構成 | 法定相続人 | 基礎控除額 |
|---|---|---|
| 配偶者+子2人 | 3人 | 4,800万円 |
| 配偶者+子1人 | 2人 | 4,200万円 |
| 配偶者のみ(子なし) | 1人 | 3,600万円 |
| 子のみ3人(親は既に他界) | 3人 | 4,800万円 |
| 配偶者+親2人(子なし) | 3人 | 4,800万円 |
4つのパターンで実際に計算
パターン1:配偶者+子2人、遺産6,000万円
- 基礎控除:3,000万 + 600万 × 3人 = 4,800万円
- 課税対象:6,000万 − 4,800万 = 1,200万円(相続税がかかる)
- ポイント:配偶者が法定相続分(3,000万円)を相続すれば、配偶者控除により配偶者の税額はゼロ。子2人合計分の税額が発生します。
パターン2:配偶者+子1人、遺産4,200万円
- 基礎控除:3,000万 + 600万 × 2人 = 4,200万円
- 課税対象:4,200万 − 4,200万 = ゼロ(相続税なし・申告不要)
- ポイント:遺産が基礎控除と同額の場合は相続税の申告は不要です。
パターン3:配偶者のみ(子なし)、遺産8,000万円
- 基礎控除:3,000万 + 600万 × 1人 = 3,600万円
- 課税対象:8,000万 − 3,600万 = 4,400万円
- ポイント:配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分以下が非課税)により、配偶者が8,000万円全額を相続すれば相続税はゼロ。ただし申告書の提出が必要です(申告なしでは控除が適用されない)。
パターン4:子のみ2人(配偶者・親ともに他界)、遺産3,000万円
- 基礎控除:3,000万 + 600万 × 2人 = 4,200万円
- 課税対象:3,000万 − 4,200万 = ゼロ(相続税なし・申告不要)
遺産総額に含まれるもの・含まれないもの
| 含まれるもの(課税対象) | 含まれないもの(非課税・控除) |
|---|---|
| 現金・預貯金(全金融機関) | 墓地・仏壇・祭具 |
| 不動産(土地・建物) | 公益法人への寄附財産 |
| 有価証券(株式・投資信託等) | 生命保険金のうち非課税枠内の分 |
| 生命保険金のうち課税対象分 | 退職手当金のうち非課税枠内の分 |
| 名義預金(被相続人が実質管理) | 借入金・未払い医療費等(債務控除) |
| 相続前の贈与(持ち戻し対象分) | 葬儀費用(控除対象) |
2024年税制改正:生前贈与の持ち戻しが7年に延長
2024年(令和6年)1月1日以降の暦年贈与から、相続発生前7年以内の贈与が相続財産に持ち戻しされるようになりました(改正前は3年以内)。ただし移行措置があります。
| 死亡年 | 持ち戻し対象の贈与期間 |
|---|---|
| 2026年まで | 死亡前3年以内の贈与 |
| 2027〜2030年 | 段階的に4〜6年に延長(移行措置) |
| 2031年以降 | 死亡前7年以内(完全適用) |
なお持ち戻しが延長された4〜7年前分の贈与は、合計100万円まで相続財産への加算が不要という緩和措置があります。
よくある3つの誤解
誤解1:「名義は子どもだから子どもの財産」
子名義・配偶者名義でも、被相続人が実質的に管理していた口座(通帳・印鑑を本人が持っていた等)は「名義預金」として相続財産に含まれます。税務調査で最もよく問題になるポイントです。
誤解2:「不動産は時価で計算する」
相続税では土地は路線価方式(公示地価の約80%)で評価します。実勢価格より低く評価されることが多いです。また自宅の土地は「小規模宅地の特例」で330平方メートルまで評価額を最大80%減額できます。
誤解3:「基礎控除以下なら何もしなくていい」
基礎控除以下なら申告は不要ですが、配偶者控除・小規模宅地の特例などを使う場合は相続税がゼロでも申告書の提出が必要です。申告なしでは特例が適用されません。
遺産総額と相続人の数を入力するだけで、基礎控除と相続税の概算がわかります。相続税かんたん計算ツールはこちら
具体的な計算例:相続税がいくらかかるかシミュレーション
実際の数字を使って、相続税がどのように計算されるかを見てみましょう。
【ケース①】遺産2億円、相続人3人(配偶者+子2人)の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 遺産総額 | 2億円 |
| 基礎控除(3,000万円+600万円×3人) | ▲4,800万円 |
| 課税遺産総額 | 1億5,200万円 |
この1億5,200万円を法定相続分(配偶者1/2・子各1/4)で按分し、各人の税額を算出します。最終的な相続税総額の目安は約2,700万円です。
【ケース②】遺産5,000万円、相続人2人(子2人)の場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 遺産総額 | 5,000万円 |
| 基礎控除(3,000万円+600万円×2人) | ▲4,200万円 |
| 課税遺産総額 | 800万円 |
課税遺産800万円。各人400万円に対して税率15%(控除10万円)を適用。相続税総額の目安:約50万円
相続税の「2割加算」に注意
配偶者と子以外の方(兄弟姉妹・祖父母など一親等以外の人)が相続した場合、計算で求めた税額に20%が加算されます。
例えば孫が代襲相続するケースや、孫養子が相続するケースでも2割加算が適用されることがあります。孫への相続を考えている場合は注意が必要です(養子縁組の場合は原則2割加算あり)。
相続税がかかる財産・かからない財産
| 相続税がかかる財産 | 相続税がかからない・非課税の財産 |
|---|---|
| 現金・預金 不動産(土地・建物) 株式・投資信託 生命保険金(非課税枠超過分) 退職手当金(非課税枠超過分) 相続開始前7年以内の贈与財産 |
墓地・仏壇・仏具 生命保険金(500万円×法定相続人数まで) 退職手当金(500万円×法定相続人数まで) 相続人が受け取る香典 公益事業に使う財産 |
知っておくべき「相次相続控除」
前の相続(一次相続)から10年以内に次の相続(二次相続)が発生した場合、一次相続で支払った相続税の一部を控除できる「相次相続控除」があります。例えば父が亡くなった後、10年以内に母が亡くなった場合、母の相続税の計算で父の相続税の一部を差し引けます。
こんな場合は税理士に相談を
- 遺産総額が5,000万円以上の場合(特例・節税の余地が大きい)
- 不動産が含まれる場合(評価額の計算が複雑)
- 非上場株式・事業用資産がある場合
- 相続人間で遺産分割について意見が割れている場合
- 税務調査が来た・来る可能性がある場合
上記に当てはまる場合、申告誤りや申告漏れのリスクが高く、税理士費用(遺産総額の0.5〜1%程度)を大きく上回る節税・リスク回避が期待できます。
参照・引用資料
- 国税庁 タックスアンサー
- 国税庁 統計年報
- 財務省 税制改正
- 相続税法(昭和25年法律第73号)・租税特別措置法